シエスタ酸素店長の神宮司です。
前回に引き続き全三回の中編をお送りします。
レガシーハーフマラソン当日
練習以外のできることはすべて準備し、意気揚々と石井くんとともに国立競技場へ。
無事に受付を終え、出走を待つ間に軽く作戦会議。
そして係員に案内された先は、国立競技場のトラック。
スピーカーから流れるナレーターの臨場感
あの国立競技場に立っているという感動
頑張ってという歓声
いやが応でも緊張感とワクワクが高まる。
時間となり一斉にスタートを切り、係員の方々の声援に送られて国立競技場を出発するランナーたち。
最初の5キロほどは何事もなく、淡々と練習通り走るのみ。
6キロ地点、一箇所目の給水地点では事前に立てた作戦通り水分補給せずにスルー。
だが、7キロ地点で石井くんと少しづつ離れていく私。
段々と小さくなる彼の後ろ姿に
「自分の走りを突き詰めろよ。後ろは店長の私に任せろ」と心の内でささやかなエールを送り、プランBを発動。
私は後続集団へイン。
ほどなくして二箇所目の給水地点へ。
あまり水分を摂ってしまうと、お腹が痛くなってしまうからできる限り飲まないようにしようと決めていた。
しかし喉の乾きが抑えられずにポカリを2杯とお水を1杯しっかり飲む。
ちゃんとお腹が痛くなる。
予期せぬ腹痛を抱え、後続集団から遅れるもなんとか食らいつく。
ここで前方に二人三脚のごとく仲睦まじい老夫婦を発見。
見てみると彼らは一定のペースで走っている様子。
御夫婦をペーサーとして、彼らよりも前に出るように少しだけダッシュし、抜いて少しした後はペースを落とし歩く。
ダッシュして歩くを繰り返す中、御夫婦は一定のペースで走り続ける。
段々と御夫婦との距離も離される。
三箇所目の給水地点。ここでもポカリ2杯とお水1杯を飲む。
そしてお腹が痛くなるルーティン。
なんだか太ももが痛くなってくる。しかしまだ我慢できる程度なので無視して走り続ける。
そこから1kmほど走ると太ももに激痛が走る。軽い肉離れか。
しかし私は店長。石井くんが孤独に前を走っているのに、責任者たる私が安易にリタイアはできない。不甲斐ない店長だと思われたくない。ついでに語尾に「ニョン」はつけたくない。
15キロ地点、膝の裏とふくらはぎにも痛みが出てくる。満身創痍だが心臓と肺には負担はまったくない。すごいぞ酸素。ほぼ毎日酸素ドームを使っている恩恵がいま発揮されている!
だが筋肉の痛みだけはすぐに治らない。流石に酸素も万能ではない。すべての痛みや悩みを一発で取り去ることのできるモノがあったらご禁制品まっしぐらだ。
少しでも筋肉の痛みを和らげようと脳内でいろいろと考える。
痛みの原因は筋断裂だ。つまりはケガだ。高気圧酸素がケガの治りが早めるのは、血中酸素濃度を高めて各細胞のスペック通りの治癒能力をサポートしているからだ。
太もも、膝裏、ふくらはぎ、足裏に酸素が供給されるイメージをするのだ。そして各細胞へ酸素を受け渡すイメージだ。
そのイメージのみを頭に強く、強く思い浮かべ続けた。
ウソだ。
本当は、
沿道に面したラーメン屋めちゃいい匂いするなとか、
久しぶりにマクドナルド食べたいなとか、
このカフェすごくオシャレだなとか、
俗っぽいことしか考えていなかった。
シエスタ公式アンバサダーの黒田雅之さんが東京マラソン走っていたとき「最後の数キロはコーラ飲みたいしか考えられなかった」と言っていたのを思い出す。
確かにコーラが飲みたい。
ちょっとだけコース外れて自販機で買っちゃおうかなと考えたりもしていた。
益体もないことを考えていたそんな折、18キロ地点で有志の方がコップにコーラを入れて配っていた。
感謝を言葉と姿勢とで伝えありがたく頂戴することに。
シュワシュワと糖分が全身に染み渡る。うまい。
やはり人は酸素だけで生きるに非ず。しっかりと栄養を摂り、準備を整え物事に当たらねばならぬ。
そしてただのコーラではない。大会関係者ではない方が自腹を切ってお渡しいただいたコーラだ。
これで百人力だ。頑張れるぞ。
しかし現実は無情である。
19.1km地点、四谷四丁目の交差点で時間切れにより神宮司店長途中リタイアを余儀なくされる。
そして今後1ヶ月間は罰ゲームの語尾に「ニョン」とつけて業務連絡をしなければならないことが決定した瞬間である。
お客様の前で出ないことを祈るニョン。
次回、走り終えて。